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「小さな助け合いの物語賞」受賞作品
第16回 ハートウォーミング賞作品・入選者
助け合いのバトン
柴山 拓士(埼玉県・中学生)
僕の地域では、毎年夏休みになると「子ども体験教室」という小学生対象のイベントが公民館で実施されています。工作・絵画・料理・スポーツなど様々な体験をすることができるので、小学生の頃は「今年はどんな体験教室に申し込もうかな」と楽しみにしていました。
小一の時、僕は母に言われるがまま一人で工作の教室に参加したのですが、知っている子が居なかったため、とても不安な気持ちになり、すぐにでも帰りたい思いに襲われていました。ずっと下を向いたままの僕に気が付いた中学生のお兄さんが、
「大丈夫かな? 一緒に作ってみようか!」
と声をかけてくれたのです。あの時の、少しドキッとした後、心がパッと明るくなる感じは今でもはっきりと覚えています。
今年から中学生になり、夏休みも課題や部活、またクラブチーム等で忙しくなりそうだと思っていた時、学校で配られたチラシに「夏休み子ども体験教室・中学生ボランティア募集中」と書かれていました。スケジュールを確認すると【ボッチャをやってみよう!】の日が空いていたので、これはあの時の中学生みたいに「誰かのため」になれるチャンスかも! と感じて自ら応募しました。
ボランティア当日、空は晴れているのに、なぜかいつもの道はどんより暗く感じて、背中も丸くなるくらい緊張している僕がいました。公民館に到着して、担当者にあいさつをする時は、心臓のバクバクする音が聞こえてしまうのではと思っていると、
「来てくれてありがとう! 今年は全然人が集まらなくてね。今日は君だけなんだよ。」
と言われて少し驚きつつも、なんだか誇らしい気分になりました。その後、会場設営や受付が無事に終わり、次はボッチャのゲームのお手伝いです。みんな楽しそうにしているのをほっこりとした気持ちで眺めていると、一年生ぐらいの子があまりなじめていないことに気が付きました。ここで声をかけるかどうか一瞬迷った時に、自分が小学生だった頃をふと思い出しました。あの時、声をかけてもらっただけでどれだけ心が和らいだか。「よし! 次は僕が助ける番だ!」と思いながら、「大丈夫? 一緒にやってみようか!」
と声をかけました。それをきっかけにその子もみんなとボッチャを楽しめているように見えたので、思い切って声をかけて良かったと思えたし、安心すると心が温かく感じました。
今回のボランティア経験では、たくさんの「ありがとう」と「笑顔」を見聞きし、改めて【助け合い】の偉大さを感じることができました。緊張していた行きとは違って帰り道では、背中はシャキッとしていつもより胸を張って歩いていた僕。空を見上げると、澄み渡ったきれいな青空が見えました。


