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「小さな助け合いの物語賞」受賞作品
第16回 ハートウォーミング賞作品・入選者
私の小さな助け合い物語
鶴田 柚芽(鹿児島県・中学生)
これは、岐阜県の山奥に暮らすSさんと私の小さな助け合いの物語だ。
Sさんは今年で八十九歳になるおばあちゃんだ。私のいとこ一家が購入した奥飛騨の古民家の向かいに住んでいたことがきっかけで出会った。
五年前の冬、私は初めて奥飛騨へ遊びに行った。この日は雪が二メートル近く積もっていて、初めて見る景色にワクワクしたことを覚えている。いとこ二人と雪遊びをしていると、いとこがSさんに会いに行こうと提案した。今よりも人見知りだった私は緊張して会いに行った。しかし、Sさんに会った瞬間その緊張は一気にほぐれた。明るい笑顔で大きな口を開け、豪快に笑うおばあちゃんだった。
私が来たことをとても喜んでくれ、
「雪の多さにびっくりしたろ?」
と岐阜の言葉で話しかけてくれ、毛作りの毛糸の帽子をかぶせてくれた。足が不自由なSさんは杖と手押し車を器用に使いこなし、何でもできる。この日も外に出てきてくれたと思ったら発泡スチロールに雪をぎっしり詰めて、帰る時にお土産にと持たせてくれた。明るくてユーモアのあるSさんのことを私はすぐに大好きになった。
そんなSさんにとても感謝していることがある。私は当時、今よりももっと人と話すことが苦手だったため学校の先生や友達に何を考えているのか分からないと言われることがあった。でもSさんは言葉でたくさんやりとりをしなくても私のことを理解してくれていた。
「あんたは話さないけどじーっといろんなところを観察していてすごいな。ちゃんといろいろ考えていること、ばあちゃん知っとるからな。」
と言ってもらえて、私は私のままでいいんだと思いとても嬉しく、Sさんと話しているとどんどん自分に自信が持てるようになった。
一方でSさんは私やいとこが遊びに行くととても喜んでくれる。私といとこが移動販売で買ったものを玄関まで運んだり、ゴミ捨てを代わりに行ったりすると、「ばあちゃんの子供達は遠くにいるからなかなか会えないけどあんた達がいるからさみしくないよ。」
と言ってくれる。私はこの言葉を聞くと自分達の存在がSさんの役に立っているのだと思い、温かい気持ちになる。
世代も地域も血縁も関係なく、私達は助け合って生きている。Sさんの存在があるから私は今、鹿児島で頑張ることができているのだと思う。Sさんは出会って以降、私が月に一度書く手紙を楽しみにしてくれ、今まで書いてきた手紙は全部箱に入れて大切にしまってくれている。この関係は私の宝物だ。また元気に会える日を楽しみに、今月も奥飛騨を想いながら手紙を書こうと思う。


