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「小さな助け合いの物語賞」受賞作品

第13回 未来応援賞作品・入選者

助けあいのこころ

熊田 百花(福岡県・福岡教育大学附属福岡中学校)

 小学校の修学旅行、決められた目的地までたどり着くというフィールドワークでの出来事だ。修学旅行一日目のことだった。班のみんなでスタート地点を出発し、地図を見ながら目的地を目指して歩いていった。道も簡単でみんなおしゃべりしながら楽しく歩いていた。しかし、しばらくすると目印が何もなくなり、地図を見てもどこを曲がればよいのかわからなくなってきた。ここ曲がるんじゃない? あっちじゃない? そこじゃないよ! と、みんなで言い合いになり喧嘩が始まった。その時、一人のおばあさんが横断歩道を渡っていた。おばあさんが渡り切る前に信号が赤になってしまった。大変! 急いで私たちはみんなで荷物を持つ人、おばあさんの手を引く人、待ってくれている車に声をかける人に手分けして助けた。信号を渡り終え、みんなほっとした。おばあさんは笑顔で、
「どうもありがとう。」
と言ってくれた。私たちも嬉しくて、笑顔になった。
「あなたたちこの辺の子?」
「修学旅行です。」
「そう、楽しくていいね。これからどこに行くの?」
 私たちの顔から笑みが消えた。
「ここに行きたいんですけど、迷ってしまって。」
 地図を指さしてぼそぼそ言った。おばあさんは嬉しそうな顔をして言った。
「この辺のことはおばあちゃん何でも分かるよ! 何でも聞いて!」
 私たちは喜び合い、道を教わり、おばあさんにお礼を言って、目的地までみんな満面の笑みで走った。なぜみんなあの時満面の笑みで走ったのか? 助けたことで喜んでもらい、そして反対に助けてもらい嬉しくて、みんな心が満たされて走りたい衝動に駆られたんだと私は思った。
 私はこの経験を通して、「助けあいのこころ」は、人を優しい気持ちにさせる力があるということに気づいた。知らない人を助けるということは勇気のいることだが、助けたことによって自分も相手も笑顔になり心が温かくなる。「かわいそうだな、大丈夫?」という気持ちだけでは何も変わらない。どんな些細なことでも「助ける」ということは、相手を思いやること。勇気を出して、手を差し伸べることが大事なんだと思う。これからも人生でたくさんの「助けあいのこころ」を繋いでいけるようにしたい。

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