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「小さな助け合いの物語賞」受賞作品

第12回 ハートウォーミング賞作品・入選者

小さな光がつなぐ未来

森高 雪菜(埼玉県)

「ユキナ先生、いつ帰ってくるの?」
 カンボジアの学校での勤務を終え、日本に帰国した私の携帯には、沢山の生徒から毎日メッセージが届く。私が滞在したカンボジアの小さな村は、愛する人々が住む第二の故郷となり、日々その地に想いを馳せている。今でも、生徒たちの太陽のように輝く笑顔が忘れられない。
 私と生徒の心を最初に結びつけたのは、カンボジアの太陽と村民の愛情をたっぷり浴びたマンゴーだった。宝石のように輝きを放つマンゴーは、私の教卓の上に毎朝置かれていて、その横では生徒が私の出勤を待っていた。「チュグァン!(おいしい!)」私の言葉を聞いて、生徒の少し緊張した顔が満面の笑みに変わっていく。私の一日は、こうしてはじまる。言葉が積み重なるにつれて、私と生徒の心の距離はどんどん近くなっていった。
 外国人が殆ど来ないこの村で、部外者の、カンボジアの言葉も解さない私がコミュニティで受け入れてもらえるのか、先生として役に立てるのか、無意識のうちに「かわいそうな人々」という偏見のフィルターを通して人を見てしまうのではないかと、不安に押しつぶされそうだった。しかし、この地に足を踏み入れた時から、カンボジアの村の人々は、私の滞在を特別なものにしてくれた。
 放課後になると、生徒たちは、「私たちが先生になる番です!」と言って、毎日クメール語の授業をしてくれた。十数人の小さな先生たちの厳しい授業のおかげで日常会話程度のクメール語を習得出来た。休日には、生徒の家族や教員にも沢山声をかけてもらい、食事に招待してもらえるようになった。村の結婚式に参加した際には、村の人々と伝統的な料理を作り、「ユキナはもうカンボジア人だね」と言ってもらえた。
 私は、カンボジアの村人そして生徒たちに、確かに助けてもらった。彼らの「助け」は、私の心をそよ風のように包み込み、心に空の水彩画のキャンバスのような彩りをもたらした。帰国した今でも、毎日彼らに想いを馳せている。彼らは私を「助けよう」と思っていなかった。愛に満ち溢れた彼らの、淡く光彩に満ちた雲のような心から自然と生まれた光を、私が「助け」として受け取ったのだ。
 「助ける」とは、必ずしも意図されたものではない。日常の中で、自然と生まれた心からの小さな思いやりが、隣の誰か、ひょっとすると世界の誰かにとって大きな「助け」となって受け取られる。その「助け」は、受け手である誰かにとって一生涯響き続けるとともに、新たな連鎖となって、人々の心に光を灯し続ける。
 私は、人生をかけてやり遂げたいことを胸に日本に帰国した。カンボジアをはじめ、発展途上国のインフラ発展に貢献することだ。インフラ企業に就職し、日々世界の不条理に立ち向かっている。カンボジアの人々が私にしてくれたように、世界の誰かの心にスポットライトを灯したい。「助け合い」のバトンを次に繋げていくために。

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