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「小さな助け合いの物語賞」受賞作品

第12回 未来応援賞作品・入選者

当たり前の道がありがたい

原口 理央(東京都・藤村女子中学校)

 私が小学生の時、いつも見守ってくれた人がいました。それは、通学途中にある、スーパーの駐車場の警備員の方です。私はその方の名前も年齢も知りません。なのにほぼ毎日通学している私を見守ってくれました。
 ある日、その方はいつもの場所にいませんでした。次の日もその次の日もいませんでした。その時、私は初めて気づきました。その警備員の方が毎日いてくれたおかげで安心して学校に行けていたのだと。それから一週間が経った日に、その警備員の方が元に戻っていました。その時に私は聞きました。「今までどうしていなかったのですか。」すると警備員の方は「ちょっとがんが見つかっちゃってね。検査入院をしてたんだ。」と言われました。私は何も言えず、今まで通りいってきますと言って通学しました。
 次の日、笑顔でおはようと言った後に、警備員の方はありがとうと言いました。そして、「明日からまた入院してがんの治療をするから会えなくなっちゃうんだ。毎朝、君のキラキラな笑顔と元気な声で元気をもらっていたよ。しばらくはいないけど、頑張ってね。私も頑張るから。」と言われ、私から出た言葉は「うん。」の一言だけでした。ありがとうという言葉が出ませんでした。毎日、安心して通学できたのは警備員の方のおかげで、感謝しなければいけないのは私の方なのにありがとうが出ませんでした。
 そんな後悔が残ったまま、一年と六ヶ月が過ぎたある日、通学をすると、あの警備員の方がいました。そこで私は「あの時、ありがとうって言えなくてごめんなさい。いつも助けられていたのは私なのに。」と言いました。すると、「助けてもらっているのはこっちだよ。君の笑顔を考えてたら勇気をもらえたんだ。こちらこそありがとう。」と言われ、とてもうれしくなりました。
 そして、小学校卒業の日、しっかりと感謝を伝えられました。「今まで支えてくれて、助けてくれてありがとう。」と。
 私はこの話を通して、助けることで助けられるということが分かりました。今、警備員の方が何をしてどうしているのかは分かりませんが、あの時、互いに助け、助けられていたのは間違いありません。助け合いをしたことで笑顔が生まれ、その人の人生を変えることができます。助けるのには勇気がいることだけれど、助けた経験は次々につながっていき、やがて社会を大きく変えることができるのです。
 「助け合い」それは、人生の分岐点。自分ができることを今やろう。

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