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「小さな助け合いの物語賞」受賞作品

第11回 ハートウォーミング賞作品・入選者

広がれ! 助け合いの輪

池松 俊哉(東京都)

 「俺はゲームしないから......」
 小学校で友達にゲームの話を振られると、いつもこう返していた。本当はゲームもしたかったし、その輪にも入りたかった。しかし、幼いながらも我が家が貧しいことを悟っていた私は、親に何かが欲しいとねだることはできなかった。
 おなかが空いたら、近所のパン屋でパンの耳をもらってきて、姉弟3人でバター炒めをつつくことが好きだった。また、図書館で調べた食べられる野草を摘んでくることもあった。
 そんな姿を近くで見ていた近所のおばさんは、趣味で育てた野菜や自分の息子が小さい時に着ていた服を我が家に持ってきてくれるようになった。私たち姉弟は、おばさんが持ってきてくれるスイカが大好きだった。「いっぱいできたから、お裾分け。今日の出来は60点だけどね」と言葉を残し、足早に帰っていくおばさん。私たちはおばさんの姿が見えなくなるまで見送ると、おなかいっぱいスイカを頬張った。秋には柿やさつまいも、春にはメロンやさやえんどう、おばさんのおかげで貧しいながらも、旬の食べ物を贅沢に味わうことができた。
 おばさんが来ると、いつも家族全員で玄関に駆け寄りお礼を言う。すると、おばさんは決まって「気にしないで、私も色んな人に助けられたの。だから、君たちもいつか自分たちのできることを他の人にしてあげてね」と笑顔で話す。
 私が小学6年生の時、近所に4歳下のパウロ君が引っ越してきた。裕福な家ではなかったようで、パウロ君はランドセルを持っていなかった。一方で、私は親が買ってくれたランドセルを6年間大切に使っていた。黄色の交通安全カバーを付けていたため、カバーを外すと艶があり、まだ十分使える状態だった。
 そこで、私はおばさんの言葉を思い出した。卒業するとはいえ、愛着のある私物を譲ることに悩んだが、卒業と同時にパウロ君へ自分のランドセルをプレゼントすることにした。カバーを外したランドセルを渡すと、パウロ君はジャンプして喜んでくれた。
 それから4年経ち、私が全寮制の高校から帰宅したある日、パウロ君が私のランドセルで通学している姿を見かけた。何とも言えない嬉しさに包まれ、久しぶりに会ったパウロ君の背中をずっと目で追いかけた。正直、自分が大切にしてきたものを、その後も大切に使ってくれているか心配だった。10年経ったランドセルは多少傷ついてはいたが、見れば大切に使ってくれていることがわかった。
 おばさんから教わった「自分たちのできることを他の人にしてあげる」をやってみると、自分も幸せな気持ちになることを学んだ。
 こうして助け合いの輪が広がっていけば、助けた人も助けられた人も良い気持ちになれる。私はこれからも自分のできることをして、助け合いの輪を広げていきたい。

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