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「小さな助け合いの物語賞」受賞作品

第10回 優秀賞青少年部門

助け合いのバス

高崎 未央(石川県)

 私は休日、よく市のコミュニティバスを利用する。最寄りの駅まで四十分、私はこの時間が大好きだ。おしゃれなカフェも高いビルもないけれど、季節によって雰囲気を変える田や山をのんびりと揺られながら見るのはとても心が安らぐ。乗客も、年配の方や私のような学生、子連れの家族や妊婦さんと様々。決して広いバスではないので、みんなで席をゆずり合って利用する。本当にあたたかい町だなあと、そんな場面を見て思うのだ。
 そんなバスも、今年の十連休は特に混んでいた。買い物袋を両手に持った女性やレジャー帰りの親子、いつになく車内はにぎわっていて、私が乗車した時にはもう席はなく、つり革を握るのがやっとだった。
 私が乗車した停留所から二つ三つ過ぎたところで、小学校高学年くらいの女の子が乗った。彼女は注意深く他の乗客を見まわして、そして私にこう話しかけた。
「すいませんが、私がバスに乗っている間、あなたに寄りかかっていいですか。私は弱視であまりよく目が見えないのです。」
 驚いた。彼女の目が見えないという事実にではなく、一人でバスに乗って、丁寧な言葉づかいで私に話しかけてくれているという事実に素直に感心した。
「もちろん、大丈夫だよ。」
 そう私が答えると、彼女はにっこり笑って、そしてゆっくりと私の肩に頭を付けた。手を握ると、あたたかい体温が伝わってくる。
「ありがとう。」
 その言葉に私は感動した。それと同時に、今まで席をゆずったりしている人を見ても、素敵だなと思うだけで行動していなかった自分の存在に気づいた。困っている人に手を貸すと、自分まで幸せになれる。そのことを初めて、身をもって感じることができた。
 私の感じた幸せは、これで終わらなかった。私たちの二人のやり取りを見ていた七十代くらいの男性が、
「そんなことなら、この席に座りなさい。」
と、優しく声をかけてくれたのだ。女の子は何度か礼をして席に座った。男性は、両手に荷物を持っていたので、一つを私が持つことにした。男性も笑顔になる、幸せの連鎖の瞬間だ。女の子の目にはどんな私が見えるのだろう。ぼんやりとしか見えなかったとしても、彼女に手を貸すことができて幸せな自分のことが少しでも伝わっていたら嬉しい。
 あれから三ヵ月――。目の不自由な女の子にはよく会うようになった。他の乗客も、彼女がいる時はすすんで席をゆずっている。そして私も。年配の方と話したりすることも増えた。話すほどに自分の知識や、視野が広がっているのが分かる。
 小さな助け合いが、私の世界を大きく広げた。今週末、私にどんな出会いが待っているのだろう。

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