小さな助け合いの物語賞

《青少年部門》

入選(3編)

輪の広がり

舘野 はづき(東京都)

「髪の毛ヘアドネーションしてみたら。」

私の長い髪を見て、知り合いがそう言ってきた。ヘアドネーションとは病気が原因で髪の毛を失い、ウィッグを必要としている子供達に医療用ウィッグの原料となる髪の毛を提供することである。その時、小学2年生だった私は自分の髪の毛が、誰かのウィッグになることなど想像したこともなかった。それでも誰かの役に立てれば、とその活動に参加してみることにした。美容師さんにお願いして、長く伸びた髪の毛は、送るための規定として定められた31cmを少し超えたところで切ってもらった。私の髪の毛はものすごく強い癖があったけれど、規定ではとくに問題はなかった。また受け入れる国にとって、送り主の国籍も関係はなく幅広く医療用ウィッグの髪を求めていることなどを知った。当時日本ではまだこの活動が行われていなくて、国内には受け入れ先が無かったこと、また私にこの取り組みを教えてくれた知り合いが以前送ったことがあった、という理由から、髪をカナダに送ることにした。行ったことのない地に髪の毛が届けられる。小2の私はすごく不思議な気持ちだった。しかし、送ってから数週間後、私の髪の毛を受け取った団体から私の元に感謝の手紙が送られてきた。英語で書かれたその手紙を、当時の私は一人で理解することはできなかった。それでも母と一緒に懸命にその手紙を読んで、それが心からの感謝を伝えてくれるものであると理解した時、「私は、遠い見知らぬ地の誰かの力になれたのだ。」という実感がわきあがり、何とも言えない気持ちになって自然と笑顔になったことを今でも鮮明に覚えている。

それから10年ほど経った今年、髪を伸ばしていた私はまたこの活動に参加したいと強く思い、八月に寄付をした。高校生になった今、前回とは考え方が大きく変化していた。ヘアドネーションという活動が日本で始まってからそんなに長い時間が経っていない。最近はメディアで紹介され始めたが知名度はまだまだ低い。なので私はこの活動にもっと積極的に参加し、更にこの活動を広める力になりたいと思うようになった。いつものように切られ、ただ捨てられる運命である髪の毛が人の役に立つ。長さなど多少の条件はあるものの基本的に誰でも気軽に参加できる活動だからこそより多くの人に知ってもらいたいと感じた。しかし普通の高校生である私にはできることが限られている。友達など周囲の人にヘアドネーションという活動を勧める、自分がやった取り組みをSNSに載せる。それぐらいしかできないのかもしれない。それでも私が知り合いの一言をきっかけに誰かの役に立てたように私の活動を知った人がこの活動に参加してくれたら、また助け合いの輪が広がっていく。私の小さな行動がいつかきっと誰かを笑顔にする大きな力になっていく。そう思うと自然と心がワクワクしてくる。

(原文のとおり掲載しております。)