小さな助け合いの物語賞

《青少年部門》

入選(3編)

「無意識」に生まれる「助ける心」

青野 ひかり(東京都)

中学二年生の時、私のクラスに中国人の女の子が転校してきた。担任が彼女に自己紹介をするように言うと、彼女は一番前の席の私ですら聞きとれないような小声で自己紹介を始めた。自己紹介が終わると、担任に誘導され、彼女は私の席から離れた窓際の一番後ろの席に座った。彼女が小声だったこともあり、私は彼女に「大人しそう」という第一印象をもった。学年中の皆が彼女に興味があり、休み時間になると、他クラスからも彼女を一目見ようと生徒が押しよせてきた。しかし、皆はじめの自己紹介で大人しいイメージを持った者も多く、なかなか話しかけることができなかった。しかも、彼女は通常授業の際、日本語の勉強のために別のクラスで授業をうけているため、ますます彼女との接点は減っていった。

しかし、私はどうしても彼女と話してみたいと思い、家に帰ってから、ネットで自分の名前や、あいさつなど簡単な言葉を中国語の翻訳にかけてノートにまとめてみた。翌日、彼女にそのノートを見せようとしたものの、なかなか勇気が出せずにいた。「急に話しかけて大丈夫かな。」「一体どんな反応されるのだろう。」という不安が私の胸に押し寄せてきたからだ。だが、一人いる彼女を見ると、どうしても話しかけてみたくて、勇気を出して彼女にノートを見せてみた。すると、彼女は一瞬驚いた表情をみせたあと、ノートに書いてある中国語が通じたようで、私に笑顔をみせてくれた。

その後も、私は、「ありがとう。」、「元気ですか?」、「今日は天気がいいですね。」など基本的な中国語を調べては、彼女と毎朝会話するようになった。すると、それを見ていたクラスメイト達も、彼女に中国語で挨拶するようになり、彼女はクラスに徐々に馴染んでいった。

三年生になると、彼女とはクラスが離れてしまったが、靴箱や廊下ですれ違った時は、お互いに声をかけ合うなどして、交流は続いた。

そして卒業式の日、卒業証書授与で、彼女は自分の名前を呼ばれると、

「はい。」

と大きな声で返事をし、卒業証書を受け取った。その姿は、転校してきて自己紹介をした時の面影はなく、堂々としたものであった。

卒業式の後、私は彼女にアルバムの寄せ書きをしてもらった。見ると、そこには「色々と助けてくれてありがとう。」と書かれていた。私は、彼女を助けたつもりはなく、ただ彼女と仲良くなりたくてした行為だった。しかし、自分がした行為が無意識のうちに彼女を助ける力になれたのだと思うと、自分の行動を誇りに思うと共に、嬉しくなり、胸にあつい思いがこみ上げてきた。

(原文のとおり掲載しております。)