小さな助け合いの物語賞

優秀賞(3編)

一視同仁の心

中村 泰輔

「身体障害者補助犬法」。一体どのくらいの人が知っているのだろうか。

 

「公共施設や交通機関はじめ、飲食店やスーパー、ホテルなどの施設では、とくべつな理由を除いて補助犬(盲導犬・介助犬・聴導犬)の同伴を拒んではならない」とする法律があることを。

 

と言いながら僕だって、あの場面に出会わなかったら、知らなかったし調べようともしなかったはず。

 

僕の実家は荒川を渡り一時間ほどしたまだまだ緑の広がる町。それは、月一程度の不定期な帰省の時のこと。買い物客の少し途絶えた昼過ぎのスーパーで見かけた光景。

 

入口の自動ドアが開いて、盲導犬を連れた女性が入ってきました。その時、母親と一緒に買い物に来て、店内を走り回っていた女の子が犬にぶつかり、泣き出したのです。子供をあやそうとする気持ちが強すぎたのか、母親から出た言葉が、「こんなところに犬を連れてくるなんて…」。

 

女性にもそれは聞こえたらしい。お店を出ようとしたのか、頭を下げながらその場を離れようとしました。

 

その時のことです。売り場の整理をしていた店員さんが女の子にかけた言葉。僕よりもきっと若いだろう「見習い」のプレートを付けた茶髪の今風の店員さんでした。

 

「このワンちゃんはね、盲導犬といって、とってもお利口なワンちゃんなんだよ。目の悪い人のお手伝いをしてるんだ。人と同じようにどこだって行けるんだ。ぶつかったのはワンちゃんのせいじゃないよね。」

 

「驚かせて、ごめんなさいね。」女性も女の子に向かって話しかけました。

 

母親も失言に気づいたらしく、「本当に失礼なことを。申し訳ありません」と頭をさげました。その間、犬は凛としたまま。

 

この女性にとっても、この犬にとっても、こんな周囲の反応はきっといつものことなのだろう。

 

「助け合い」それは人を気遣うやさしい心。そしてきっと誰でも持っている本質。

 

でも時々「気遣い」や「やさしさ」って、口に出したり、行動にすることがちょっと気恥ずかしかったりするから厄介。

 

困っていたら、声掛ける。

 

人のためにちょっと我慢する。

 

間違っていたら、「ごめんなさい」。

 

そんな当たり前のことが出来ていなかった自分に少し反省。そして、うちの犬ももう少しだけ利口になってくれたらなぁと、躾け方にも少し反省。

 

だれかれの区別なく、平等に慈しみの心を持つこと、それが、「一視同仁の心」らしい、ちょっと感じ入った一場面だった。