小さな助け合いの物語賞

優秀賞(4編)

助け合いのリレー

荒谷 伸子

現在高校一年生の娘が、小学校一年生の時のことです。

いつも通り主人と子供達を送り出し、家事を終え、ホッと一息ついたところ、小学校保健の先生から電話がありました。嫌な予感がしつつ聞いていると、案の定、娘が登校中に道路でこけて額をケガし、一応保健室で手当をしていただいたということでした。ケガの程度の説明を受け、
「今日は、学校から帰るのが早い日なので、娘が帰宅してから私が病院へ連れていきます。」とお伝えしました。

顔の傷なので、できるだけ跡に残らないようにして下さると定評のある病院へ連れていき、診察、説明を受け、怖がり、泣き叫ぶ娘をなだめ、麻酔注射をされ、何針か縫われました。病院から帰る頃には、私も心身共にヘトヘトでした。夕食の時、やっと、娘からこけた時の状況や、その後どうやって小学校へ行ったかを、じっくりと聞くことができました。

道路の段差につまずき、顔からこけたこと。その時、登校中の同じ小学校の五年生と二年生の姉妹が、「大丈夫?」と声を掛けてくれ、五年生の姉が娘をおんぶし、二年生の妹が、自分、姉、娘のランドセル三つを持って登校し、すぐに保健室へ連れていってくれたとのことでした。娘は、姉妹の名前がわからなかったそうですが、在校児童があまり多くない学校で、姉妹の学年、登校ルートから、すぐに〇〇さんのところの姉妹とピンときました。

娘より倍の距離を通う姉妹が、小柄な娘とはいえ、親でも背負うとずっしりくるのに小学校までおんぶし、娘より一つ上の子が、三つもランドセルを持ってくれた姿を想像すると、他人のことなのに、大変だっただろうと、申し訳なく思われました。

そこで、翌日姉妹の家へ電話してみると、お母さんが出られ、娘を助けてくれたのは、やはりその姉妹だったので、学校が終わり、娘と共にその姉妹の家へお礼を言いに行きました。すると、お姉ちゃんが、
「大丈夫だった?私ら、当たり前の事をしただけじゃけえ、気にしないで下さい。もし、これから、こけたり、困ったりした子がいたら、助けてあげてね。」と言ってくれました。

それから一年後、新一年生が入学し、娘が二年生になった春。帰宅した娘から

「さっき下校中にね、こけて膝から血を流して泣いとる男の子がおったけ、その子の家まで連れて帰ってあげたよ。私も去年こけた時の気持ちがわかるし、あの時お姉ちゃんにお世話になって、嬉しかったけえ。」
と聞かされました。

当たり前のことかもしれないけれど、このような助け合いのリレーが続くといいな、と思いました。また、私自身も、人の痛みを頭ではなく心で受けとめ、さりげない助け合いのできる人になれたらと思いました。